リサイクル公害を知る!『廃プラ・リサイクル公害とのたたかい - 大阪・寝屋川からの報告 -』
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  • ✎IRIEP事務局
  • 2022/03/15

この本は、大阪府寝屋川市東部地域で発生した廃プラスチックのリサイクル処理による、空気の汚染と健康被害をなくす住民運動が記されています。本の編者は「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」です。この本を知るきっかけとなったのは「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」より封書で届いたことからです。

『廃プラ・リサイクル公害とのたたかい - 大阪・寝屋川からの報告 -』の要約
2004年、寝屋川市、枚方市、交野市、四条畷市の4市は、廃プラの処理施設建設計画を住民に知らせないまま決定し、廃プラ圧縮梱包する中間処理施設と熱溶融による再生品製造工場の建設を許可した。住民で結成した「守る会」は、8万名の署名を集め寝屋川市と要望書を提出したが却下。大阪府も建設不許可申請を却下。つぎに大阪地裁へ工場の操業停止と4市組合施設*の建設中止を求めて提訴するが加齢と思い込みで却下し、大阪高裁も一審を支持。国の機関である公害等調整委員会へ原因裁定をするも訴えは却下された。
 *4市組合施設:一部事務組合である北河内4市リサイクル施設組合

日本の公害病は、高度経済成長期の1950年代から1960年代に水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくが発生、あるいは拡大しました。発症から原因の特定、裁判、判決に至るまで長い時間が費やされました。その間にも多くの人が苦しみ亡くなりました。

今度は、使用済みの工業製品をリサイクルするための施設から有害化学物質が生じ、健康被害を受けたと住民が訴えを起こしたのです。1996年に社会問題となったのは「杉並病」です。東京都の杉並区に建設した廃プラを圧縮梱包する施設から有毒ガスが発生し、周辺住民に健康被害が起きました。国の公害等調整委員会(以下、公調委)は、施設から出る化学物質が原因と裁定し、施設は廃止となりました。このときの公調委は、原因物質が特定されていなくても施設から出る化学物質が原因との裁定を出しました。

それに対して、寝屋川の「寝屋川病」は、住民が杉並病を根拠に要望書の提出や裁判を三度起こし、公調委へも原因裁定を申請したがいずれも棄却されました。一審の「加齢と思い込み」で却下では、過去の裁定からはにわかに信じがたいものです。それに加えて、一審では裁判の途中で裁判官3名全員が入れ替わり、公調委では委員の総入れ替えがあったとのこと。理由は分かりませんが、政治的な作用があったとしたらそれは許されることではありません。

また、住民と専門家らによる独自の大気環境調査が行われたものの健康被害を起こすまでの結果とは認めなかったようです。化学物質で関心の高いのは、アルデヒド類でシックハウス症候群の原因とされているホルムアルデヒドです。合板や壁紙などの建材や塗料、接着剤に使われていますが、寝屋川の調査ではホルムアルデヒドの大気中濃度が高かったことを指摘しています。

一方、公調委の裁定では、ホルムアルデヒドの室内濃度指針値を100μg/㎥・0.08ppmを示したうえで、他も含めて基準値以下であることを指摘しています。気になるのは、耐えがたいほどの異臭に悩まされる住民の生活環境を行政がどのように対応したかです。

そして、本年4月1日にはプラスチック資源循環促進法が施行されます。第一条は目的です。確認しておくと、
「国内外におけるプラスチック使用製品の廃棄物をめぐる環境の変化に対応して、プラスチックに係る資源循環の促進等を図るため、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等の措置を講ずることにより、生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」
と規定されています。

国がリサイクル政策を進めることは大いに支持することですが、廃プラのリサイクル過程で生じた異臭や揮発性の化学物質や未確認物質が特定された場合、あるいはその疑いがあるときは、健康被害が起きる前に迅速に対応する責務があります。本法には、公害病から学んだ生活環境や環境保全等が脅かす事象が生じたときの規定はありませんが、行政には憲法第十三条の幸福追求権の保障に基づく生活環境の保全に万全を期し、リサイクルにより生じた問題等へは速やかに誠実に対応して欲しいところです。

☞ 本文は『廃プラ・リサイクル公害とのたたかい - 大阪・寝屋川からの報告 -』及び参照サイトより一部引用しています。